2014年2月1日土曜日

小学校の算数授業が危ない


 「算数嫌い」という言葉があります。生理的に算数や中学入学後にはじまる数学が好きになれない。その結果、算数や数学が苦手になってしまうという意味だと思います。数学嫌いという言葉はありませんから、たぶん小学生の頃から嫌いになっているということだと思います。なぜ「算数嫌い」が起こるのかと言えば、これは私の推測ですが、たぶん「間違える」とか「分からない」という感情に対しての恐怖感が生み出すものなのではないでしょうか。

 算数や数学で分からない問題をまえにしたとき、何よりも平常心を保つことができるかが重要だと思います。平常心を保てなければ、どんなに学力がある人であっても解けないという現象は起こりえるものだと思います。小学生や中学生たちに算数と数学を教えている私であっても、入試問題などで質問を受けたときに、後で考えればなんでもないような問題で戸惑ってしまうことってやっぱりあるわけです。そんなときというのはたとえば授業終了時間間際のときであるとか、何かプレッシャーを感じて異常に力んでいるようなときというのが危ないです。これはあくまでも私の想像なのですが、「算数嫌い」の子どもたちは、私と同様のことが日常的に起こっているだけなのではないでしょうか。
 たとえば、こんなことってないでしょうか。クルマですれ違うことが難しいような細い道を走っているときに、前からクルマが来たとします。そんなときにどうしたら良いか分からなくなってクルマを止めて、まるで固まったようにハンドルを握ったまま相手がクルマを動かすのをただ苛立った表情で見つめる。そんなときの精神状態に「算数嫌い」は似ているかもしれません。

 安行地区・新郷地区の場合、「算数嫌い」はたぶん全小学生の1割にも満たないのではないかと思います。たとえ自分が「算数嫌い」だと思っている人がいたとしても、実際には算数が苦手なだけであって、順番に学習をしていけば算数を克服できるという人の方が多いのではないか…。私にはそんな思いがあります。そして冒頭で書かせていただいた「算数嫌い」と算数が苦手というのは、全く違うものであると思います。「算数嫌い」は能力ではなく、あくまでも性格が算数・数学に合わない状況なのだと思います。どんな勉強をしようにも、算数や数学が頭に入らない。頭というか体自体が算数と数学を受け付けなくなってしまっている…、そうした状態が「算数嫌い」という状況なのではないかと思います。

 そうした「算数嫌い」とは異なり、いま小学校での算数の学習が不充分なために、中学入学後に数学の授業がついてこれなくなっている人たちがとても多くなっているようです。少し前まで多かった計算問題はできるけど、文章問題はできないという中学生たちとは違う、明らかに計算問題が解けない生徒が増えてきています。
 例えば —6+5 の計算がすぐ答えを出せない。あるいは小学生でやったはずの分数の足し算と引き算を忘れている。または約分ができない。中学1年生の2学期の時点で、そうした中学生の割合は、安行地区・新郷地区では3割を超えているように思います。もしも前述の正負の数と分数の単元で示した3例のうち、いずれかができない生徒を探すとすれば5割を超えているかもしれない。そんな悪夢とも思えるような状況がいま安行地区・新郷地区の中学校で起きています。

 たぶんこれも、生徒を叱らないで褒めて育てるという「ゆとりの教育」の置き土産なのだと思います。いくら小学校が算数の時間にサポートの先生をつけたとしても、習熟度別授業を設けたとしても、大多数の小学生の皆さんの学力はたぶん上がらないと思います。それは安行地区・新郷地区の小学校の算数授業は考えて解くという作業が少なすぎる状況にあるからだと思います。生徒たちが問題を1人で考えた上で解くというよりは、生徒のみんなが考える前に先生が説明してしまうことで授業が成立している。別の言い方をすれば、考える前に先生が説明をしなければ授業が成立しない状況にいまの小学生たちのレベルがある。
 前述の習熟度別授業について、近隣のある小学校では習熟度別に3クラスに分け、一番上のクラスでは先生がすべての内容を説明する前に、生徒の皆さんに考えさせながら、ときにはヒントを伝え、また考えさせながら問題を解かせるという指導をしています。できた生徒は1人で先生のところへ行き採点と解説を受ける。これがたぶん、算数授業の理想的な姿なのではないかと思います。でもその割合が1学年の人数の中で少なすぎる。一番上のクラスの授業の進め方をその下のクラスでも行えば良いはずだけれど、それをしてしまったら、「学校の勉強が分からない」という苦情が保護者から寄せられるに決まっているし、たぶん公立の小学校という基本理念から離れてしまうことになってしまうのではないだろうか。だから小学校はどの生徒からも不満が出ないように…その結果として、ほぼ全員がわかったと錯覚?できる授業をする必要に迫られることになってしまっているのではないだろうか。

 算数や数学という科目と他の教科との違いは、小学校入学以降に学習した単元の知識が、次に学習する単元でも利用されるというところだと思います。このために前の単元の理解が不充分だと、新たに学習する学習範囲の理解が不足がちになる。もちろん他の教科でもそうした傾向はありますが、圧倒的に算数や数学という教科にその傾向が強いように思います。それに英語や国語そして理科や社会という教科が比較的短期間に復習できるのに対して、算数や数学は復習するのに、あるいは学力を上げるのに時間が掛かります。たぶんほとんどの小学生たち(とくに男子はこの傾向が高い?)が得意な科目に選ぶであろう算数が、実は得意な生徒が少ない教科でもあるわけです。
 たいていの場合、小学生時代に算数の勉強が不充分であったことに気づくのは中学校入学後だと思います。シローズに来てくれている中学1年生の中にもいますね。こうした場合、復習をしながら中学校の学習の内容を学習する必要がありますが、やっぱり不可能となってしまうことが多いですね。それどころか、なかなか中1学習範囲が終わらないという状況になってしまっているのが現状です。たぶん小学校の担任の先生の「大丈夫ですよ」という言葉には、気をつけるべきだと思います。それに算数が得意だというお子さんの言葉にも疑いを持つべきかもしれません。あと中学生のお子さんには、定期試験の学年順位で安心をされない方が無難なのかもしれません。