いま塾の中でこんなことが起きている。
計算ができない生徒が出てきているんだ。
例えば分数の計算ができないとか、小数の方がちょっと不安というのではない状態の、分数も小数も一応はできるのだけれど、掛け算と足し算引き算が同時に入っているような問題で、なぜだか足し算引き算の方を先にやってしまうとか、+(足し算)と書いてあるのに、なぜだか掛け算をしてしまうとか、これって計算間違いと言われれば、確かに計算間違いには違いないのだけれど、イメージとしては間違える癖が脳にしっかりと張り付いてしまっていて、なかなか剥がすことができない。
説明すれば理解してくれて、間違いがグッと減るのだけれど、もう翌日には前の癖が戻っていて、また間違いをしてしまう
ということは、いくら関数や図形ででてくる計算をして答えを出す種類の問題を理解してもらっても、結局方程式の計算ができないから正解にならない。ということはどんなに頑張っても、数学で決して4がつかない。数学の偏差値が50を超えないということが起こる。
深刻なのはこうした生徒たちの割合で、安行地区の2中学の場合、塾に来ている生徒たちに占める割合を考えると、一クラスに7〜8人くらいはいるような気がする。だから彼らの中には、自分が計算が苦手とという意識を持ち合わせない子までいる。
思うに成績を上げるにはこの部分が苦手だからとか、分からないという感情が必要だと思うのだけれど、彼らにはその部分が不足しているように思えてならない。
きっと彼らの心の中には、この地域の中学生たちがよく口にする、もっとできない子がたくさんいる。という思いがあって、ここでもそんなに真剣になるようなことではない。そんな思いが、正しい知識を手にすることを拒んでいる部分があるのかもしれない。
いま塾は、強い対費用効果を突き付けられている。
とくにこの地域では、どうせ塾に通っても成績が上がらない。という気持ちが保護者の中に広がってきているように思う。
多くの中学生たちが正しい計算ができなくなっている状況は、数学の成績が上がるのにかかなり時間がかかることを意味する。まして剥がそうにも剥がれない、しつこく脳にこびり付いて離れないその癖は、土曜日曜に無料で補習を続けたとしても、そこに毎回出てきてくれることすら不確定な状況がある中で、どうやって数学の成績を上げればいいのだ?と言いたくもなる。
きっと暗記まじりで行う定期試験対策という塾にとっての逃げ道はあるのだろうけれど、そのやり方が生む大きなデメリットを考えてしまう僕には補習をやり続けることしかもう道は残っていないことに気づいて、補習をやり続けることになるのだろう。
もうこの地域の小学校の授業は、無理に学力を身につけない、身につけようとしない形で進んできている。
でもその問題を小学校の先生方は一切口にしていないから、児童も保護者も何の不安もない形で中学校に進学することになる。
その結果として、こうした事態が起こってしまっている。