2013年6月9日日曜日

「1人の生徒が変わるとき」




 去年のデータが分からないので、私の推測になるのですが、たぶん安行中学校で川口北校以上への進学者はこのところ10人を下回り、5人から7、8人というのが現状なのではないかと思います。最近では、今の大学一年生(現役)が中学を卒業した年が一番良かったと記憶しています。あの年は確か20名が川口北校以上の高校に進学したのではないでしょうか。20名というのは、ここ20年余の中で最高の人数だと思います。たいてい10名を下回るくらい、学力レベルの低い年だと5名というのが、やはり安行中学校の実力となっているようです。新郷の東中学校も、安行東中学校も年によっての差はあると思いますが、だいたい安行中学校と同じような状況だと思います。
 こうした状況が、安行地区や新郷地区で川口北校の評価を上げているのだと思います。つまり、「川口北はよほど出来る人しか入れない」とか「川口北校に入れれば、どんな仕事にも就ける」etc.的な嘘がまかり通っているのだと思います。

 なぜそれが嘘かというと、前にも別のところで書かせていただいたと思うのですが、さいたま市の中学校に子どもたちを通わせている保護者たちは、川口北校をそのような高校とは思っていないようです。平均的な学力の子どもたちが入学する高校、あるいは不合格回避のためにレベルを下げて入る高校。そんなふうに考えている方たちの方が多いのではないかと思います。ところがわずか、そこから直線距離で10キロほど離れた安行地区や新郷地区では、全く別の賞賛ばかりが聞こえてくる。それに騙されてしまってはいけないと思います。

 もっと現実を見ないといけない。結局川口北校という高校は進学校という括りで高校を考えたとき、やはり最低レベルの高校だと思います。なぜならそれより下のレベルの高校だと、大学の入学のために指定校推薦を選ぶ必要が出てきてしまう。ここでいう指定校は、公立・私立上位校の生徒が選ぶ有利な条件のための指定校推薦ではなくて、大学入学のための選択肢が指定校推薦しか残されていない状況になってしまっているということです。
 そしてもう一つ気になるのが、最近の就職試験問題のレベルです。それを考えたとき、やはり川口北校以上の高校合格の学力がないと、労働条件の揃う企業への就職はかなり難しいという側面があると思います。

 この辺までにしておきましょう…。こうした事情に、シローズのスタッフたちは誰もが気づいていようです。そしてそのスタッフたちは、塾に来てくれた小学生と中学生の皆さんに、川口北校以上、できればその上の蕨・越谷北校以上の高校に入学してもらいたいと強く思っています。ただどんなにそのことを強く願ったとしても、やはりすべてのシローズに来ている生徒の皆さんに、それを求め過ぎることはできないと思います。あくまでもどのレベルの高校を選ぶかは、生徒本人とその保護者が決めることですし、塾がその決定に口を挟むことは決して許されないことだと思います。それにいま小学生と中学生を取り巻く環境としては、どれだけの時間の勉強をしてもらうかということについても、塾が口を挟めない状況にもなってきているようにも思います。あくまでも塾の授業と家庭学習までを含めたその生徒の学習の質と量は、保護者と生徒である小学生・中学生が決めることなのだと思います。ただ良い結果は欲しい…。誰もがそんな難解すぎることを求めている状況であっても、絶えずシローズの中を見渡して、小学生から中学生までの生徒の心の動きを想像しなから変わりつつある生徒たちはいないか? それを探しながら声をかけるのが、塾長である私とスタッフたちの日常になっています。 

 なぜ安行地区・新郷地区の中学生たちが、川口北校以上の高校になかなか入ることができないか? それを考えるとき、この地域の中学生たちの意識の問題にぶつかってしまうように思います。当然小学校と中学校の授業のレベルの問題があるでしょう。でもそのレベルの問題を作っているのは、授業を受けている児童・生徒たちの意識ではないでしょうか。

 塾の授業でも、生徒たちの意識の問題にぶつかってしまうことが多々あります。まず塾に入塾して間もない生徒たちの中には、おしゃべりやあくびをしながら授業を受けようとする子がいます。全く授業と関係のないことを講師たちに話して、その反応に笑いながら、その合間に説明を聞き問題を解こうとする子までいます。その状況にない生徒たちでも身体を動かしたり、集中しているときとは違う目の動きをしています。たぶんそれが小学校や中学校での日常的な授業の受け方なのだと思います。小学校・中学校の先生方も、決してそれを良しとしているわけではないと思います。でもそういう状況を容認しないと、保護者の皆さんの理解を得た中で、学級運営をすることが出来ない状況になってしまっているのではないでしょうか。

 塾の英語の指導で、単語や熟語と英文を書いてくることを宿題として出しています。そして次の授業で確認テストをするのですが、書いてきているのにもかかわらず、確認テストで半分も点数が取れていない生徒がいます。これも意識の問題だと思うのです。「覚えよう」とか「覚えなくちゃならない」という意識が低すぎるのだと思います。たぶん彼らは覚えるためではなく、宿題をこなすために単語や英文を書いているのだと思います。これこそが意識の問題です。ただこの意識の問題の厄介なところは、改善のための処方箋がいまのところないことです。

 処方箋がない。ではどうするか? たぶん怒鳴ったり、ひどく怒ったりしてしまったら、昔の子どもたちと違って、大半の子がヤル気を無くすと思います。だからその処方箋は使わない方がいいと思います。
 ただ意識の問題を抱える子どもたちは、ときに授業妨害となってしまう行動を気づかぬうちにしてしまうことがあるように思います。授業中に授業と関係のないことを口にしてしまったり、宿題をあまりやって来ないで授業の進みを止めてしまったりということが起こります。そんなときは注意をさせてもらっています。注意をしても、直す姿勢がない場合は怒ることになります。
 やっぱり残されている方法としては、生徒と話をすることしかないのかもしれません。世間話から今日あったこと。そこにときどき高校や受験の話題を入れて…、こちらがそのこの子のことを一生懸命考えているということを知らせることしか方法は残されていないように思います。それから保護者の方からの情報も有益です。

 そうしたシローズの日常の中で、いま小6のA君が変わりつつあります。彼は元々能力がある(知能指数がとくに高いという意味ではなく、学習に向いている)のに、いつも途中で気持ちが折れていたんです。それは、平常心で何をやっても合格点を得る妹さんの影響もあったのかもしれません。プライドが特別高い彼には、身近で何をしても器用に結果を出す妹さんの存在によって、絶えず挫折感を感じていたのではないでしょうか。
 その彼がひと月ほど前から変わりました。塾授業中の様子が違う。教室で眠そうにダラダラとやっていた彼はもういません。塾の中で誰よりも明るく、キラキラ輝いているように私には見えます。もちろん、今のままですべてが達成できる…というレベルではないと思います。もっと家庭学習の時間を増やす必要があると思いますし、彼がシローズで使っているテキストも、出来ればSクラスの生徒が使っているテキストにやがて変更する必要も出てくると思います。でも彼は、たぶんやってくれるでしょう。私はそう思っています。




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