2013年9月6日金曜日

公立入試平均点を考えるときの憂鬱


 実は今年の公立高校入試で、こんなことが起きています。
 平成15年度入試以来ほぼ下降を続けていた入試得点が、一気に5教科で37.6点も上昇しました。平成15年度から平成25年度までの入試平均点の割合を記載すると、下のようになります(満点を100としたときの平均点のパーセンテージを記載)。

   15年度60.8% → 16年度60.2% → 17年度55.4% → 18年度55.8% →  19年度57.7% →
   20年度55.8% → 21年度53.8% → 22年度50.5% → 23年度48.6% → 24年度47.6% →
   25年度55.1%
             ※ 平成22年度、23年度は前期試験のみ記載しています

 公立高校入試の平均点は、平成15年度の60.8%から微増はあるものの、前期試験に5教科の試験が導入された平成22年度からは(それ以前は前期試験が調査書と面接、一部の高校で50分の総合問題が実施されていた)、年々低下していました。そしてこの間高校入試において、上位校から中位校までの合格者の各教科の平均点は、ほぼ偏差値順にきれいなピラミッドを作っていたはずです。具体例をあげれば、浦和高校に合格した生徒たちのある教科の平均点は、その下のレベルの大宮高校や浦和一女に合格した生徒たちのその教科の平均点よりも高かったと思われます。入試資料に書かれている偏差値順に合格者の平均点がしっかりとしたピラミッド作る。しかも5教科にわたって…。それが県の意志であったように思います。
 5教科に渡ってきれいなピラミッドを作る。そのために毎年難易度を上げる必要があった。とくに数学は、平成24年度入試で100点満点中36.5点まで平均点は低下しました。たぶん数学は得意な生徒と苦手な生徒が多数存在する科目なのだと思います。だから県も、難易度の高い問題を1問から2問程度入れる必要があったのだと思います。たしかに数学には、浦和高校や大宮高校、浦和一女用とも取れる難易度のかなり高い問題が含まれていたように思います。どのくらいの難易度かと言えば、難関私立高校の入試問題に近い問題と言えばお分かりになるかもしれません。毎年のようにそうした問題が含まれていた。そして学力の低下がありますから、平均点は年々低下せざるを得ない…。そうした状況が確かにあったと思います。
 25年度入試も引き続き平均点が低下する。そう考えていた関係者たちは多かったと思います。実は私もそうでした。ただ入試が終わり、塾に来てくれている生徒たちの合否が分かったとき、何か例年の入試とは違うものを感じたというのが正直なところでした。私以外でも、そう感じた塾関係者は多かったはずです。ある高校入試の評論を仕事にしている方は、「県が匙(さじ)加減を間違えた」という言葉で、25年度入試を表現しました。そして「入試得点の上昇は25年度に限ったことで、26年度は数年前の状況までふたたび低下する」という言葉を続けていました。
 入試の合否は入試得点と内申点、それから中学校での部活動や生徒会活動と資格等の合算で決まります。ただその中での割合で言えば、ナンバーワンが入試得点、そしてナンバーツーが内申点であることには間違いないと思います。高校入試において入試平均点が上がるということは、受験者が点数を取りやすい状況になるということですから、入試得点の差は比較的出にくい。その結果ボーダー(合否の分かれ目)は内申点のウェートが上がることになります。
 例えば、現中学3年生が入試を迎える26年度入試が昨年並の平均点(275.5点/500点満点、55.1%)の場合、川口北校に合格するには合格者平均偏差値(62.1)では、35平均の内申点が必要になると思われます。しかしもしも入試難易度が上がり24年度の平均点(237.9点/500点満点、47.6%)まで下がったとすれば、同じ合格者平均偏差値の62.1程度であったとしても、おそらく32平均程度の内申点で合格が得られることになると思います。
 受験関係者のほとんどが、下がると言っている入試平均点がはたしてどうなるのか? それは今の時点では全く分からないことだです。おそらくこれから6ヶ月、入試のその日までさまざまな憶測を呼び、場合によっては保護者まで巻き込むようなことになるかもしれません。その波紋をさらに広げるつもりはないのですが、私は入試平均点が25年度と同様のものとなる可能性はあるのではないかと思っています。ですから、今年のシローズの受験指導は入試平均点が昨年並みであることを仮定したものになると思います。理由は中位校から下位校の、例のピラミッドの姿です。
 埼玉県は上位校から下位校までの合格者の平均点を難易度(偏差値)の順番に並べようとしていた節があります。その結果、入試問題は年々難しいものになってしまっていた。ところがそれによって、いま下位校の入試得点は私たちが首を傾げたくなるほど合格者の点数が低下してきている状況にあるようです。例えば市内の合格者平均偏差値46.4の高校の入試最低点は500点満点中80点を下回っていると言われています。さらに低い合格者平均偏差値43.6の高校ではやはり500点満点中50点を下回るとも言われています。いずれも5教科の合計点です。1教科の平均点を考えれば、10数点から20点弱といったところ。浦和高校から大宮、一女を受験する生徒なら、1教科で合格点が取れる状況にあると思います。もはや今の入試問題で、すべての高校受験生の学力を測ることが出来なくなってきている。そしてゆとりの教育や学力の低下といった問題が、集約される形で偏差値50以下の高校に訪れている。そうした見方ができるのでないかと思います。つまり上位校から中位校までをきれいなピラミッドで現そうと、入試レベルをあげれば下位校の生徒の正確な学力を測ることができない。また逆に中位校から下位校までの受験生の学力を正確に測ろうとすれば、上位校を受験した生徒たちの学力を正確に測れない。今はそうした状況にあるのだと思います。ですから県が、入試のレベルを下げたとしても不思議はない。私はそう考えます。
 もしかしたら埼玉県も他県が先駆けているように、ここ数年のうちに高校入試問題を上位校から中位校用の問題と中位校から下位校用の問題を用意するかもしれません。そうでもしないと、今の入試の歪みは是正できないところまで来ているとも言えます。ただ可哀想なのは、確かな合格判断が出来なくなってしまったために、志望校を下げざるを得なくなってしまう受験生たちだと思います。





                                                                         

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